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2011年6月 6日 (月)

英国王のスピーチ

原題《The King's Speech》 2010年 イギリス 111分
(2011年2月26日 日本公開)


監督:トム・フーバー 脚本:デヴィッド・サイドラー
出演:コリン・ファース、ヘレナ・ボナム=カーター、ジェフリー・ラッシュ

The_kings

『高鳴る緊張感をジョージ6世と共に』 (相当ネタバレ)

私の好き好き度 (`・ω・´)キリッ

(以下、Yahoo!映画投稿後に追記を重ねたものです)

遅ればせながらようやく鑑賞(2011年5月27日)。
アカデミー賞で4冠を獲った際、日本公開が待ち遠しくなったと同時に、思わず
これ、アカデミー会員からのウィリアム王子とケイトさんへの婚約ご祝儀?!
と思った私がいました。

■アカデミー会員なんて…と言いながら、会員になりたいんだが…

「映画芸術科学アカデミー」のその成り立ちなどは、
検索すればいろいろ知ることができますが、
映画業界人で編成・審査しているだけあって、
いろいろな思惑やら駆け引の臭いがプンプン。

日本では、「アカデミー賞を獲ったのだから素晴らしいに違いない!」
と何故か根強い信仰(!)が見られますが、”○○賞だから素晴らしい”は
個人的にはかなりどーでもいい。もちろん、ちょっとした目安・参考にはなりますけど。
私としては基本的にはアカデミー賞を神化する気はナシ。

でも、6000人の業界人の皆さん、やっぱり基本映画好きでしょうから、
バカに出来ないのも確か。ビジネスライクな会員もいれば、
とんでもない映画ヲタもわんさかいることでしょう。
今回の英国王も誰がどんな形でイチオシしたのか気になります。

例えそこに「ロイヤルウェディングご祝儀」要素があったとしても、
こういった小さな良品に光が当たるのは嬉しい。

あ~、私も会員になってみたい。
会員になるには招待制だし、映画業界人でなきゃいけないし…夢の夢 つД`)・゚・。・゚゚・*:.。


■吐きだせ!プレッシャー

今でも王室は世間の話題をさらう存在であるのはすごいですね。
作品中には「王室が卑しい存在になってきている」と嘆きの台詞がありましたが、
現代においても「国の象徴」である王室というのは、ちょっとした未知の世界。
今回も観客としては、ジョージの気持ちを想像できるものの、
本当のところの気持ちは天に召されたジョージのみぞ知る。

ましてや王様ですもんね。そのプレッシャーは半端ないでしょう。
また、どこか真面目であるからこそ、プレッシャーを感じるのだと思います。
堕落している王様は、恐らく、プレッシャーなんて感じない。
「自分はこうなりたい。こうありたい」という何か強い思いがあるからこそ、
それがプレッシャーとなって心にのしかかる気がします。

でも、「なりたい!ありたい!」の願望って素晴らしいと思いますね。
そこにたどり着けないジレンマも相当なものですが、その苦しみも人生の醍醐味。
もちろん、もがいている時は「醍醐味」だなんて言えず、それこそジョージのように
イライラが募り癇癪も起こしたくなります。

しかし、その怒り、ジレンマの中にこそ、自分の本当の心の声が存在することを
知れたジョージは幸せ者かもしれません。
ジョージが心の膿を吐き出すように、様々な言葉を発するシーンには、
こちらもスカっとする思いでした。
でも、あのシーンのせいでイギリスではR15になっちゃったようですけどね。

いやいや、卑猥なシーンでもないし、あれこそ人間の姿なんですから、
「なんつーエロい言葉!」と敬遠する方が、映画の中のジョージに失礼ですわ


■己の解放、そして使命

この作品のひとつのキーワードである“吃音”。
これがテーマに絡んでくれば、「言葉で想いを伝えることの達成感」が
物語の頂点にきそうなものですが、この作品はそんな個人的な胸の内よりも、
使命を言葉によって果たす」ことに焦点が当たっているのが興味深い。

もちろんジョージの葛藤や吐露は作品中に散々出てきます。
それでも、国民の前に出る姿には、人間ジョージというより、
王ジョージとしての「使命と覚悟」が強く見られました。

また、運命というものを信じるならば、妻エリザベスは「夫を大成させる」
という使命を背負った人。でも、彼女の素晴らしいところは、使命に愛情が
伴っていること。あんな奥様がいたジョージは幸せですよ。
周囲がどんなに冷たい目で見ようとも、「大丈夫」と言ってくれる人が
1人でもいるって、どんなに力強いことか。

そして、療法士ライオネルも、王の力になることが天からの使命。
でも、ライオネルにも当初は我欲があった描写が面白い。
また、自称・プロフェッショナルでありながら、劇団オーディションでは
「君の台詞には叫びが聞こえない」などとダメ出しされるのも面白い。

ライオネル自身、「人生上手くいかない」ということの体験者。
上手くいってない者が、上手くいってない者を指導する。
ジョージは徐々に吃音に対しての恐怖心から解放されますが、
きっとライオネルもジョージを指導することで、自身の解放を得たような気がします。

そう、この作品は、王ジョージの物語でありながら、妻の愛情物語でもあり、
また、本来は役者として生きてみたいと願った療法士の成長物語でしょう。


■同じ痛みを知る人が筆を持つということ

この脚本を担当したサイドラー氏(73)が、ご自身も吃音で悩んでいたことは
パンフレットで知りました。幼い頃、彼のためにご両親がジョージ6世の
スピーチを聞かせていたことにもビックリ!
この脚本を手掛けるまでの彼のエピソードにも胸が熱くなりましたが、
何よりもホッとしたのは、彼が商売のためというより、
彼自身の人生のためにこの作品を執筆した…という印象。
そう、この脚本執筆自体が、彼の人生のスピーチなのでは?!

痛みを知る人は、同じ痛みの人を笑わない。
笑うとすれば、自虐的要素を含んだユーモア。
自分の痛みをユーモアに変えられた時、その人にとっては痛みも武器。
でも、自分と同じ痛みを背負っている人間をあざ笑うのであれば、
それは性格が悪すぎ!罰が当たってしまえ!

さてはてサイドラーさん、悪い印象はないのですが、実際はジョージに対して
どういった思いがあったのでしょうか。
無礼承知で書いた部分もあるでしょうし、自分を投影した部分もあるでしょうし。
これも内々は、サイドラーさんのみぞ知る、ですね。


■有名人もつらいよ

この作品を世間に公表するに辺り、妻のエリザベスは
「私が死ぬまではやらないで~~。つらくなるから(´;ω;`)ウウ・・・」と
言ったそうですが、私がエリザベスでも同じことを言いますわ。

だって、夫の苦しんでた過去があからさまに!
しかも、舞台だ、映画…となれば、ドキュメントじゃない訳で、
それなりの誇張も入ってきますしね。

でも、裏を返せば、「こういった形でジョージ6世を知ることができてよかった!」
と思っている映画ファンはたくさんいるわけで、プラス、これを観て、
ジョージ6世を嫌いになる人は皆無に近いんじゃないかと…。
むしろ愛される王様になったと思います。

有名人はつらいですよね。
例えば歴史上に名前を残した人物も、専門家の手によって、「研究」という名目で、
過去の日記やらラブレターやら、死後にいろいろと漁られるわけです。
私が故・有名人の立場だったら、顔から火が出る思い!!
「見るな~(#゚Д゚)_‐=o)`Д゚)・; 触るな~ヽ(#゚Д゚)ノ┌┛)`Д゚)・;」と
死後の世界から大騒ぎですよ。なんだったら亡霊になって祟ってやる!(爆

でも、これも裏を返せば「”知りたい”と思わせるほどの人物」だということ。
サイドラーさんにとっても、ジョージは、”書きたい!”と唸らせるほどの
人物だったのでしょう。

実在の人物を描く場合、身内は手放して喜べないこともあるかと思います。
でも、監督にしろ、コリン・ファースにしろ、
「この映画のせいでトラブルが起きるとも思わない。ロイヤルファミリーが見ても
気にならない!」
とキッパリ言っています。なんという自信!
でも、その自信は、王室に対する敬意と愛情を持って、この作品に挑んだという
誇りの表れでしょうね。悪戯に撮った訳でないことに大変好感を持ちました。


■心掴まれた役者陣

コリン、ヘレナ、ジェフリー、もう~参りました!
極端な話、役に魂売っちゃった…というくらい、なりきっていたお三方。
特に今回、久々に美しい(笑)ヘレナにお目にかかれ感激。
改めて「この人、美人だわ~」と思いました。

同時に「旦那のティム・バートンにも自宅ではこんな感じなんだろうな」と。
「あなたってすごい~~」とか褒めて男を育てるみたいな(笑

また、バートンがどうしてヘレナに妙チクリンなメイクをさせて過激な役を
させるのかも分かった気がします。
ヘレナの素の部分は自分が自宅で独占したいんだー!きっと!
バートンは映画の中では、あえて嫁さんの素顔に触れさせないようしてる感じ。
↓↓↓↓↓↓↓

Herena

今回、ヘレナが演じたエリザベスもと~~っても素敵な女性でビックリ!

Herena2

「素敵な吃音だと思ったわ!」の台詞には、思わず目を細めてしまいました(*´σー`)

また、コリン・ファースには、ただただ感心。
この人の気難しそうな顔は、この役にピッタリでした。
でも、いい男なんですよね~(左)。しかし、「マンマ・ミーア」での最後のコスプレ(右)や
歌うコリンには大笑いしました。(家にあるパンフレットを並べて撮ってみた)

Korin

今回、「吃音」を表現するのも大変なご苦労があったと思います。
また、監督も、吃音に関してはこうインタビューで応えていました。
下手にやるとコミカルになってしまう。もしくは観客が観ていて辛いと感じるリスクも
ある。また映画自体のペースが遅くなる可能性もあった
」と。

確かに障害を演じること、また実在の人物がコンプレックスに感じていたことを
演じることは、下手すると「茶化している印象」に成りかねません。
しかしながら、この作品、コミカルなシーンをダラダラと流さなかったのは
よかったと思います。登場人物の葛藤する姿の方が長いんですよね。

そして、”王室茶番劇”にならなかったのは、コリンが醸し出す風格も大きかった!
彼にとって、ジョージ6世は当たり役と言えましょう。


そして!なんといってもジェフリー・ラッシュ!

Jefuri

'97年に「シャイン」を観てから、`;:゙;`;・(゚ε゚ )ブッ!!もう14年…orz
あの頃、このポスターに騙された気分でした。
まさかこの感動を誘いそうな躍動感あるポーズがフリ●ンだたっとは…。とっ、飛ぶな!

Shyain
正直、好きにはなれなかった作品でしたが、それでも、ジェフリー(当時45歳)の
印象は強烈でした。その後も様々な役柄をこなしましたが、やっぱり世間の印象は
パイレーツのバルボッサでしょう。私はパイレーツに「2」の時点で飽きてしまい(爆)
その後のバルボッサさんを観てません…(^^;

今回、オーストラリア人であるジェフリーが、オーストラリア人であるライオネルを
演じたことも大変意味があるものだと思いました。
ちゃんと実在したライオネル氏に敬意を払っていると感じますね~。
「肌と顔の感じが似ていれば何人でもいいのだ!」…と映画界もなりがちですが、
実在した人物に対しては、その国の俳優を使うというのは良いことだな~と思います。

ジョージとライオネルの「友情物語」にも見えるこの作品。
2人の距離が縮まっていく描写の数々には、クスリっとしたり、切なくなったり。
最初は互いを「利用できるもの」程度にしか思っていなかったのに、
お互い「悪いことしたな…」と目を伏せるようなシーンにはグッときました。

ラストの名スピーチ。ジョージの前で指揮を振るように、しかし静寂を保ちながら
佇むライオネルのあの存在感!ジェフリーの切ないタレ目がまたイイ!
でも、あの瞬間、決して、ジョージは操り人形ではなく、己の使命を全うすることが
できたことにも感激しました。そして、スピーチ後に交わす2人の会話もシャレが
効いていて、「大人の映画」を観た感じ。

そこに被さるように、エンドロール前の「その後」の説明。
それを読んでまた驚きながら、ベートーヴェンのピアノコンチェルト「皇帝」に
耳を傾けるのでした…


■名場面にこの楽曲ありき!

今回、数々のクラシック音楽にも目がハート。
ライオネルの部屋でのヘッドフォンにて大音量の「フィガロの結婚 序曲」。
序曲だけあって、まさに2人の訓練の序章にふさわしい(笑

あの訓練、「自分の声を聞こえなくさせる」というよりは、独り言をつぶやいている時の
状態にしてるんでしょう。自分の声を骨伝導(頭の中で響く声)に任せて、
外部の音を排除する状態。あと、フィガロの結婚序曲って、ものすごく気持ちが躍動
するんです。数多くのオペラの序曲はあれど、私はやっぱりフィガロの幕開けが
何度観てもドキドキワクワクします。

そして、なんといってもベートーヴェンの交響曲第7番二楽章!
「ノウイング」のレビューでも書きましたが、この曲、ベートーヴェン自身も
世間から「あいつ、やべ~!」などと言われていた時期の曲です。
でも、1813年の初演は大成功で、この第二楽章はアンコールが来たほど…とか。

四分の二拍子で|♩ ♪♪|♩  ♩|♩ ♪♪|♩  ♩|…というリズムに刻まれた躍動感と生命力。
この名曲をバックに流されたら、なんでも名場面!(爆
5部形式になっているこの楽章ですが、3回目の1stヴァイオリンが入ってくるあたりから
更に燃えてしまう私。クラリネット+ホルンの部位もたまりませ~~ん。

96年に観に行った「陽のあたる教室」(すみません、これも好きな作品ではない…)
でも、この二楽章が使われる名場面があります。ベートーヴェンの生涯(障害)に
登場人物の想いが重なるので、益々切なかったです。

ちなみに私が好きなのは、カルロス・クライバー指揮 ウィーンフィルの’82ライヴ版。
(※新宿にあったヴァー●ン・メガ●●アで強力に推していたので買ったら海賊盤だった…でござるの巻)

Beto7

また、スピーチものでは、ダニー・レヴィ監督の「我が教え子、ヒトラー」を是非!
これはこれで、凄まじい物語であり、そして皮肉、笑い、なかなかすごい小品です。


ふぅ~~長々とお読み頂きありがとうございました。
派手さはないけれど、じわりじわりと迫ってくる緊張感は是非体験して頂きたい。
スピーチが終わった瞬間、きっと「やったぁ!」と小さく拳を握ってしまう良作です。

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  • 試写会が当たり鼻血ブー!wずっと待ち続けた甲斐がありました(涙)

我爱你!李 連杰!

今後もJet作品のBD化が増えること願ってます( ^ω^ )♪

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