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2011年5月18日 (水)

ブラック・スワン

原題《BLACK SWAN》 
2010年 アメリカ 108分(2011年5月11日日本公開)


監督:ダーレン・アロノフスキー 脚本:マーク・ヘイマン他
出演:ナタリー・ポートマン(ニナ)、ヴァンサン・カッセル(トマス)、
ミラ・クニス(リリー)、バーバラ・ハーシー(母)、ウィノナ・ライダー(ベス)

Blackswan

私の好き好き度 ( ´・ω・`)

『幻覚見過ぎてぽぽぽぽーんっ!』 (ネタバレしすぎ)

評判が良すぎて、なんとも言いにくいんですが、
個人的には「あんまり…」。(←声ちっちゃ!)

ただ、私の職業柄、どうも舞台芸術・古典芸術が関わってくると、
映画を観ながら「割り切る頭」がものすごく鈍くなることも大きな原因。

今回は、「バレエが題材」にマジで突っ込む職業人としての感想と
「サイコスリラー」としてかなり笑ってしまった映画ファンとしての感想、
まるでオデット(白鳥)とオディール(黒鳥)のような二面性レビューでいきます。

さて、長いですよ。今回はいつもの「倍」の文字数です。
お好きな飲み物片手にお読みください。



■まずは「こんなこと、この映画に対して真面目に語ってどうするwww」的なお話


私がこの話に入りこめなかったのは、ズバリ、主人公ニナの精神力の弱さ。
こんなにメンタル弱いプリマ、どーすんの!?おいっ…という感じでした。

「いやいや、それがこの話の肝じゃないですか~」と、映画ファンである私が
せせら笑っていますが、真面目に突っ込むと、こんなプリマ、
マジで使い物にならないのだが…(爆
よほど人材のいないバレエ団なのだなぁ。
(ロイヤルバレエは盛況だけど…という台詞があったので、ここの団としては
興行はイマイチなのでしょうね~)

ニナはどうも28歳らしいのですが(ナタリーとほぼ同年代の役柄)、これ17歳くらいの
役がよかったと思います。28歳といえば団に入ってそれなりに経っているだろうし、
表現力うんぬん…というのは、幼いころからバレエを習っていれば、
既にぶつかってきた壁のはず。「アンタの踊りはつまらん!」と言う鬼教師は
バレエ学校にも腐るほどいただろうに。何を今さら…という感じの年齢でした。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

これが「バレエ映画」であれば、白鳥の湖にひっかけて、
ニナが初めて人を心から愛す純愛話など絡んできそうなものですが、
まぁ、そこはあれだ、アロノフスキー!純愛入れる時間があったら鬱を詰め込む。

でも、あくまでも映画のキャラクター「ニナ」に物申すならば、
役作りや表現ってものをまったく分かっていないというか、
本当にバレリーナとして、舞台人として、幼い思考で情けなくなりました。

性的なものを体験すればオディール(黒鳥)の表現が増すのか?

よく「男性経験が豊富だと色気が出る」とも言われますが、色気って、
経験だけじゃないですよ。究極なことを言ってしまえば、それはもうその人が
もともと持っているモノだと思っています。

オディールの妖艶さを出すには、自分に足りない性的体験をいろいろ試みる

これもひとつの手だとは思いますけど、「役作り」からするとちょっとズレてる。
これも極端な話、同じ考えでいけば、殺人鬼の役作りには、人を100人殺してこい、
となる。人を殺したことがない奴がリアルに演じられるか?という話になる。
もちろん極端な例ですよ、極端なね。

例えば料理だって、いろいろなものを食べ歩くことで味を覚えることはできても
それと料理がうまく作れるか、盛りつけは上手いか…はやっぱり別物と思います。

センスを磨く時、どのように磨こうとするか?
その方法の選択も、その人の「センス」じゃないでしょうかね~

本番間近にクスリに逃げて、「んふんふ」なんて幻覚見ながら、
朝も一人で起きられないようなプリマったら…
(※いえ、この映画の見せ場です)


また、役作りというのは、どれだけ憑依能力があるかが問われると思います。
実体験してなくとも、役が自分に降りてくる能力。
だからこそ、舞台人にとっては、映画を観たり、小説を読んだりなど、
自分以外の人生の引き出しをたくさん持つことも大切。
自分だけの人生って、表現に限りが出ますからね。
また、相手の気持ちが即座に読める人間であることも大切。

ニナは一体何を今まで勉強してきたのかとも思うし、人の気持ちにも疎い感じ。
また、一番精神的にプリマとしてダメなのは、観客のことを一切考えないこと。
ただただ自分が苦しい苦しいばかりで、舞台初日にやっと、しかも終幕で
自己に目覚めるって、どんだけ三流なんだか…と思いました。

映画のキャラに真剣にダメだしするなら、「ニナはプリマの器じゃない」。

でも、だからこそ、”映画の主人公向きのキャラ”なんだけど。

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

団の監督トマスも一見スケベなセクハラ親父にも見えますが、
この人、なんだかんだ言っても、ニナを育てようとはしてるんですよね。
ニナがあまりに黒鳥を踊れなくて、王子役に「彼女とヤリたいか?」などと
聞いていましたが、あんなの舞台関係者にしたら挨拶程度の会話です。
あれでいちいち参っているような人は、やっぱりトップには立てない。

芸術はやっぱり基本エロスですよ。
一般の人が聞いて「えー!」とビックリするような性的発言も、
それをいかにウィットに富んだ受け答えができるかが演者の器。
(もちろん中には、ただのエロ演出家もいますけど…(^^;))

トマスはニナに大事なことをたくさん言ってるので、台詞はよく聞いて頂きたいです。
別に枕を強要した訳でもないし、すべてニナを試しているかのよう。
恐らくトマスは、自分に近づいてくるプリマ候補たちはたくさんいるから、
女に関しては余裕があるんだと思いますよ。
舞台初日が迫っても、結局はニナを切らなかったトマスに辛抱強さを感じました。
また「自分の殻をやぶれるはず」って、どこかで信じてくれてたんですもんね~

ま~、主役切っちゃったら、映画が終わっちゃうんだけどw

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ニナの母親は、この映画の場合、どこまでニナの幻覚で、どこまでが本当の
母親の姿か、若干、観客に委ねられている部分があります。

自分のキャリアが、ニナを妊娠したことで終止符を打った…とのことですが、
これ、ニナを産むことであきらめたんじゃなくて、もうその時点で、自分のバレリーナ
としてのキャリアに限界を感じてたんじゃないかなぁって思いますね~。

人間誰でもあるでしょ。
自分を納得させるための理由。

本当にキャリアが大事なら、バレリーナなら尚更、自己管理の鬼。
妊娠??
避妊しなさいな。

それもできなかったのは、何かバレリーナとして自暴自棄になっていた時期だった
んじゃないかな~と勝手に思いました。(いや、この物語、そこまで深くないとおもうけど)

確かに娘を縛り付ける部分がある母親ですし、この作品の意図で見れば、
母親はニナの成功を邪魔しようとしているようにも見えます。

でも、「あなたが役に潰される!!」とか「もう4羽の白鳥でもいいじゃない」的な
発言は私は意地悪に感じませんでした。

親は子供の可能性を計りきれないものですが、でも、親だから分かる子供の性格って
あると思うんですね。ましてやバレリーナはその演者生命が非常に短い。
団の中で生き残って食べていくには、プリマじゃない生き方もあると思います。
例えば、役者でも、「名わき役」と呼ばれるようになったからこそ生き残っていける人が
いますし、自分の役割をわきまえることによって「食べていける」んです。

実はお母さん、ニナにバレリーナとして一瞬でも長くいて欲しかったのかも。

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ライバルのリリーにも、ニナは怯えまくっていましたが、アンダースタディ(代役)が
いつだって主役を狙っているのは当たり前だし、「自分をリリーが傷つけるはず!」
なんてビビってる暇があったら、クスリやってること通報すれば、一発でライバルが
蹴落とせるのに、頭悪りぃなぁ~~…なんて邪念が(笑

強迫観念が強いとはっきり言って一緒に舞台やる方は大迷惑です。
誰かが体調崩した…ってだけで喜ぶ人がいる世界ですよ。
でも、それくらいシビアにならないと食べていけない。
「きゃ~~!」だの「あぁ~~~!!」だののニナにはシラ~っとしました。
(いや、ここ、観客として燃えるとこよ!おい、私!)

でも、一番の衝撃はウィノナ・ライダーの老け具合でしたが…


■……と、まぁここまで長々と読んで下さってありがとうございます。
ここからは映画ファンとしての感想。


結局のところ、これは舞台設定はなんでもよかったんだと思いますね~。
バレエじゃなくてもよくて、いわゆる「ある女性の精神状態」が撮りたかったと。

ナタリーも幼少の頃バレエもやっていたということで、んじゃバレエ絡ませますか、
というノリがあったようにも思えました。だって、アロノフスキー監督、
ちっともバレエが好きそうじゃないんだもの。
終盤の舞台のしょぼさにもガッカリしました。
あのマットもないわwwww 落ちるだけで普通に死ぬ!(爆

ちょっと予告はじめ宣伝に「バレエ、バレエ」言い過ぎたかも。
確かに予告だけだと、まるで少女漫画にありそう、且つ、昼ドラ路線!
レディースデーに合わせての封切も狙ったね!…と感心しましたが、
なかなか帰り際の会話が難しそう(笑
1人で観に行くか、本当になんでもぶっちゃけて話せる人と観に行くことをお勧め。


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昔からこういった精神状態の作品はたくさんありますが、去年あたりから
またこの手のものが目白押しで、ちょっと飽きてきましたね~。

90年代で言ったら、それこそこの「ブラックスワン」なんて、
「バレエのファイトクラブ」みたいな部分がありますね。

サイコ的な色合いでは、なんとなく物足りないし、サスペンスの要素を考えると
そうどんでん返しがある訳でもなく…。ホラー…うーん、痛かったけど…。
「あぁ、ナタリー、すごい頑張ってるなー!!」とひたすら感心する作品といいますか。
ナタリーの一人恐怖の世界を堪能する感じです。

オープニングでFOX searchlight picturesのロゴだったので(foxの子会社)、
もともと単館系の作品に仕上げるつもりだったんだぁ~と思いました。(たぶん)
であれば、いろいろ納得。
限られた予算の中で描く精神世界。ナタリーありきがひとつの頼り。
多くの人にこの歪んだ世界を分かってもらおう、というよりは、
「追い詰められた女の精神絵巻を作ってみたよ!みてねー!」という感じも。


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

でも、表現は面白い。
痛みもとことん見せてくるので、思わず目をつぶってしまったシーンも。
皮とか爪とか…あれは凝視するのが痛いっ!

でも、ちょっと笑ってしまったのは、ニナの幻覚の中で足がバキっとなるシーンと
黒鳥のメイクが「マリリン・マンソンかwwwww」と。
(ご存知ない方、マリリン・マンソンで画像検索を。見たことはあると思います)

ジークフリート王子もあんなマンソンオディールでいいの!?(笑
いや~網タイツかぶったようなアレも斬新な演出でした。

また、32回転フェッテも20回転もしないうちに、なんか決めポーズが。
せっかくならあれはちゃんと観たかったのですが、あそこは黒鳥に変化する
CGが見せ場ですもんね。フェッテを見せるんじゃなくて、ニナが本当に黒鳥に
心身ともに同化した様子があそこのシーンの肝。
「バレエが見たい」と思ってこの作品を観に行くとかなりの肩透かしだと思います。

ただ、チャイコフスキーの音楽が映画館ならではの音量で聴けるのは最高!
去年上映の「オーケストラ!」もそうでしたが、チャイコフスキー大活躍!
生きてるうちはなかなか報われなかったのにね…つД`)・゚・。・゚゚・*:.。
「白鳥の湖」も喝さい浴びたのは、彼が死んで2年後ですもの…。

でも、サントラの編曲はあんまりでした。


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

ナタリーのバレエシーンは、ボディダブル疑惑でひと騒動あったようですが、
(これもナタリー ボディダブル で検索すればいろいろ出てきますよ)
私はダブルを使うこと自体は、映画なんだからOK!
アクションスターなんてほぼダブル使いですし、今回のナタリーもそうですが、
今はきれいに顔がCGではまりますよね~。

確かに全身でのバレエシーンは、ちょっと違和感があります。
でも、それをいちいち気にしていては映画なんて観てられないですし、
私個人は、その映画にまつわるゴシップはどうでもいい方。

また、私のようにシラ~っとする人もいれば、多くの人が感動したこの作品。
それはそれで、やっぱりこの作品に力があったことの証明だと思います。

それに、これをきっかけにバレエに興味を持ってくれる人が出てくるのは
とっても良いこと。主に描きたかったことは「精神世界」ではあるけれど、
ちょっとでも「バレエ観てみたいな」とか「白鳥の湖って全編どんな感じなんだろう?」
とか思う人が増えるには、とても良いきっかけだと思います。


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

「白鳥の湖」にひっかけるならば、ニナの最期(私はあのままニナは死ぬんだろうと
解釈)はハッピーエンドってことでしょうね。
強迫観念から生まれる幻覚にも、そして、この黒鳥オディールにも打ち勝った!
そして、自分の人生にも初めて開放感を覚えた!!嬉しいー!あぁ~~ん…

でも、ごめん。

公演初日に死ぬな。
翌日からのチケット払い戻しやらどーすんの?!

……などと頭を抱えた私には、全く合わない作品でした。



でもでも、映画ファンなら、この「精神絵巻」覗いてみる価値はありますよ。
ナタリーの女優魂も素晴らしかったです!

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